【ヤフー×LINE/働き方対談】オフィス環境のアップデートで従業員のウェルビーイング向上へ

多様な働き方ニーズを踏まえたオフィス環境の整備は、仕事の効率や満足度を高め、従業員のウェルビーイング向上にもつながります。Zホールディングスのグループ企業であるヤフーとLINEは、かねてより従業員の働きやすさを追求するため、オフィス環境の改善に努めてきました。現在も予測の難しいコロナ禍の情勢に対応するべく、より柔軟な働き方の実現に向けてさまざまな取り組みを展開しています。

LINEは2021年4月に本社を四谷に集約移転し、コラボレーションスペースや個室ブースなどを整備したオフィス空間に進化。ヤフーは2022年4月1日から通勤手段の制限を緩和し、居住地を全国に拡大できるように「どこでもオフィス」を拡充しました。

こうした取り組みの背景にある働き方の哲学や、オフィスアップデートの具体的な内容、そしてオフィス環境の向上につながるZホールディングスのシナジーについて、両社のキーパーソン2名が語り合いました。

LINE、新しい働き方「LINE Hybrid Working Style」を開始
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2021/3912

ヤフー、通勤手段の制限を緩和し、移住地を全国に拡大できるなど、従業員一人ひとりのニーズにあわせて働く場所や環境を選択できる人事制度「どこでもオフィス」を拡充
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2022/01/12a/

  • 佐久間貴大(ヤフー株式会社 PD統括本部 オフィス・経営支援本部 オフィス最適化推進部 ストラテジーチーム リーダー)
  • 新卒でオフィス家具販売店に入社してオフィス設計やインテリアデザイン業務を担当。2013年11月にヤフーに入社。紀尾井町移転やグランフロント増床/富国生命リニューアル、Kタワー増床などオフィスの新設や原状回復工事、働き方にあわせたオフィス改修工事を担当。
 

  • 川﨑恵志(LINE株式会社 Employee Care室 ファシリティマネジメントチームマネージャー)
  • 新卒で大手オフィス家具メーカーにスペースデザイナーとして入社。2017年9月にLINEに入社。四谷オフィスへの本社集約移転を含め、現在までに国内外の大小14拠点のオフィス開設/移転や館内増床、オフィス改修、原状回復工事に携わる。

働き方の選択肢を用意することが働きやすさにつながる

――企業が提供するべき「働きやすいオフィス」とは、どのような環境を指しているとお 考えでしょうか?

佐久間:働きやすい環境は人により異なるため、いろいろな選択肢を提供する必要があると私たちは考えています。オフィスはもちろんのこと、コワーキングスペースの利用やリモートワークなど、さまざまなケースを想定し、それぞれの環境をアップデートすることが重要ではないでしょうか。ヤフーではそのための手段と方法を考えることに注力し、従業員が生産性高く働ける環境づくりを大切にしてきました。

健康経営の推進
https://www.z-holdings.co.jp/sustainability/conditioning/

川﨑:LINEもヤフーの考えに近いです。それぞれの場所で、その時々の業務に応じた使い勝手と心地よさを提供することも大事ですよね。人がたくさん集まるオフィスであれば、業務に集中できる場所とコミュニケーションできる場所があって、目的に応じて選択できるように環境を整えておく必要があります。特にコロナ禍で在宅ワークが増えたことで、オフィスにはより「オフラインコミュニケーション」に重きが置かれているように思います。

ヤフー紀尾井町本社オフィス内の社内レストラン「BASE」

佐久間:2016年に移転したヤフーの紀尾井町本社オフィスも、まさにコミュニケーションを重視した空間です。自席に座ると目の前に同僚がいて、雑談しやすい環境の中で業務を進めていくような特徴を持たせました。一方で集中できる場所も用意し、状況に合わせて選択できるようにしたんです。また、仕事場としての機能の他にも、リフレッシュスペースを用意したり、従業員食堂の「BASE」「CAMP」で3食を提供したりと、コロナ禍になる以前からオフィスの中に従業員の満足度向上につながる仕掛けを施してきました。そのことも、ヤフーの働きやすさにつながっていると思います。

川﨑:LINEはコロナ禍をきっかけにオフィスを大きく見直しました。各部署の出社率に合わせてフリーアドレス制を導入することで、2拠点をクローズして本社を四谷オフィスへ集約移転しました。また、「LINE Hybrid Working Style」という新しい働き方をスタート。出社を前提とせず、チームとして最も高いパフォーマンスを発揮するために、組織や職種の特性に応じてオフィス勤務と在宅勤務を組み合わせられるというもので、チームごとに働き方のルールを決められるように自由度をもたせました。職種によって働き方の希望は全く異なり、例えばエンジニアなら在宅で仕事をしたい人が多数です。働き方を全社で統一せずにチームごとに選択できるようにすることで人材の流出が防げたり、優秀な人材の採用につながったりする可能性が高まると思います。

LINE四谷オフィス内のカフェ

佐久間:働き方に幅を持たせる、選択肢をつくるというのは、両社の共通した考え方かもしれません。ともあれ、働く環境というのは「用意したら終わり」ではありません。社員一人ひとりに、うまく活用してもらうことが何より重要で、そのためには状況やニーズの変化に応じてアップデートしていく必要があります。例えば、コロナの感染拡大が落ち着いた時、在宅勤務が日常化した従業員からは「収束したからといって、なぜ都心のオフィスまで行かないといけないのですか?」という声も挙がりました。そこで、都心中心だったWeWorkだけでなく、沿線に多くの拠点を持つNewWorkを新たに契約したところ、従業員サーベイの満足度をはかる数値が上がったんです。これからもユーザーである従業員に使ってもらいながら、さまざまなことを試し、あるべきかたちを模索していきたいと思います。

オフィス利用者である従業員の声に寄り添い、尊重する

――お互いのオフィスへの印象についてもお聞かせください。まずはヤフーの佐久間さん、LINEのオフィス環境について、どのように感じますか?

佐久間:LINEのオフィスは、細かいところにまで目が行き届いている印象です。来客フロアと執務フロアの会議室でパーテーションの色味も統一されていますし、オフィス全体からブランドの統一感がにじみ出ていると感じました。

川﨑:ありがとうございます。LINEには「スペースデザインチーム」という空間デザインを専門とするチームがあり、オフィス構築ではデザイン監修をしています。スペースデザインチームはマテリアルの持つ質感にこだわり、細部のディテールにまでこだわっているんです。ブランディングの統一感についてはBX室(ブランドエクスペリエンス室)が監修をしていて、オフィスに配置するキャラクターの利用方法なども都度確認を取っています。

LINE四谷オフィスのエントランス

――川﨑さんはヤフーのオフィスやその考え方について、どんな印象でしょうか?

川﨑:コロナ禍前から「どこでもオフィス」を導入して、早々にフリーアドレスに移行するなど、もともとオフィスに対してすごく進んだ考え方を持っている会社だと感じていました。また、オフィス設計の進め方も効率的で、デザインコンペをしないことで設計会社を選定するまでの時間を短縮し、生じた時間を従業員とのワークショップなどでニーズを汲むなどしていますよね。エンドユーザーの使い勝手を追求することに時間をかけているのだなと感じます。

ヤフーの紀尾井町本社オフィスでは、2016年移転時よりフリーアドレス制を採用

佐久間:フリーアドレス制に関しては、代表の川邊の意向もあり、導入までにスピード感がありました。ただ、従業員の声を聞く取り組みは、じつは紀尾井町オフィスのときの反省を生かしてはじめたことなんです。会社主導でたくさんの新しい試みを進めたことで、いち早く効果が出たものも多くありましたが、社員に試みの意図を十分に伝えきれなかったものもあったように感じていました。そこで大阪のオフィスをひらくとき、各部門から代表従業員に参加してもらい、設計の人と対話するワークショップを数多く行いました。いま進めている高知センター移転PJでも「どういう働き方をしたいか」をメインテーマに、2時間×5回、計10時間くらいかけてじっくり深掘りしていったんです。

川﨑:それはすごいですね。LINEはどちらかというとボトムアップ型の会社で、現場レベルでいろいろな意見を出しながら、ルールを決めていく社風があります。今回導入した「LINE Hybrid Working Style」は従業員アンケートで多くのLINER(LINE従業員)が「ハイブリッド型の働き方を希望」と回答していたことをきっかけに生まれました。生産性と従業員満足度の両方を向上させられる新しい働き方になっていると思います。

――ヤフーの紀尾井町のオフィスにも、従業員の声を反映させる予定はありますか?

佐久間:じつは、2021年からすでに始めています。在宅勤務が浸透した2020年5月に実施した従業員アンケートでは、オフィスでは「個人で作業をしたい派」と「みんなとコミュニケーションをとりたい派」の大きく2つに意見が分かれました。そこで、紀尾井町オフィスに「実験オフィス」というエリアを設置し、「1人で集中するフロア」、「複数人でコミュニケーションをとるフロア」を切り分けることで、それぞれの要望に応えられるようにしています。

ヤフー紀尾井町本社オフィスに2021年に設置された「実験オフィス」のチームフロア
ヤフー紀尾井町本社オフィスに2021年に設置された「実験オフィス」の個人ブース

川﨑:LINEも新しい四谷オフィスをつくるにあたっては、従業員アンケートをとりました。要望が多かったのは、やはり「集中」と「コミュニケーション」。そこで、増加するオンライン会議に対応するために個人ブースを180台増設しました。ブースに近寄らないと使用中か空室か分からないという声があるため、照明とフロアマップ表示で見える化を行っていく予定です。また、オンライン会議では難しいワークショップやディスカッションをオフラインで行いやすくするため、最大72人収容できるワークショップルーム「LINE CAMP」を設けました。名前は従業員公募で決め、キャンプに来た時のようにみんながフラットに意見を言い合ってイノベーションを起こす場にしたいという意味が込められてます。

LINE四谷オフィスに2021年に設置された個人ブース
LINE四谷オフィスに2021年に設けられたワークショップルーム「LINE CAMP」

オフィスづくりの知見を融合させ、シナジーを生み出したい

――今後、ヤフーとLINEの知見を集約して、Zホールディングスとしてのオフィスアップデートに生かしたいというお考えはありますか?

佐久間:現在は、まだ川﨑さんと意見交換をしている段階です。直近ではヤフーの高知オフィスの移転にあたって、川崎さんにオブザーバーとして参加してもらい、ヤフーのオフィスづくりの進め方などを見てもらっています。オフィスのレイアウトを考えるときに川崎さんからアイデアをもらうこともありますし、少人数で多くの案件を回しているLINEオフィス部門の仕事の進め方からは学ぶべきところも多いはずです。今後はZホールディングスとしても、川崎さんにプロジェクトの中心に加わってもらいながら、オフィスをつくっていきたいですね。

川﨑:私のほうこそオブザーバーとして参加している中で、とても多くのことを学ばせてもらっています。Zホールディングスとしてのオフィスづくりはこれからですが、継続して情報交換させていただいたり、双方のプロジェクトに参加し合ったりしながら、まずは良いところを取り入れてブラッシュアップしていきたいと思います。早く一緒にプロジェクトを担当してみたいです。

――最後に改めて、コロナ禍をふまえ、「これからのオフィスに必要なこと」を教えてください。

川﨑:コロナ禍ではマイナス面ばかりがフォーカスされますが、ワークライフバランスの面では家族との時間が増えて良い影響もあります。今後、オフィスはエンゲージメント、ブランディング、イノベーションの場にシフト変更して、従業員やお客様が行きたいと思うオフィスにしていく必要があります。そのためにも、両社の知見を融合させてオフィスや働き方からシナジーを発揮していけたらと思います。

佐久間:私も同感です。ただ、コロナ禍でワークライフバランスが見直されたといっても、テレワークを実施している企業は社会全体でみると少数派です。つまり、世の中の多くの会社や働き方は、以前とあまり変わっていないということになります。しかし、今後はますます社会情勢が大きく変化していくでしょうし、これまで以上に仕事と生活が近くなっていくことも予想されます。そこで生き残っていけるのは、ためらわずに変化を続けられる会社ではないでしょうか。このことを念頭に置きながら、Zホールディングス全体としてオフィス環境、働きやすさを追求し続けていきたいですね。

取材・編集=末吉陽子(やじろべえ)